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・佐助が水の中では金魚、陸にあがると人間
・という金魚パロディ
・佐助の家は真田の庭の池
>>>
水から出ると人になる金魚がいるらしいと聞いて、幸村はもうこの三日で五匹も金魚を日干しにした。
見事に、五匹とも死んだ。
そうなるとさすがに無頓着に六匹目に手をつけるのはためらわれて、何か供物だの手順だのがあるのかと家人に聞いて、凶行が発覚した。
「そういう金魚は違うんです」
散々叱られて懇々と諭されたうえ、半紙に二度と金魚は飼いませんとまで書かされた。
「お寺まで供養に行ってらっしゃい」
一郎居士、二郎居士、三郎居士、と戒名を付けられた金魚たちの弔い銭を持たされて屋敷を叩き出された。
「生き物を大事にできないような子は、真田にはいりません」
叩き出される前、そう言われたけれど、幸村は、全然違うと思った。大事にしようと思って、水から出したのだ。もし人になって話ができれば、もっといろんなことをしてやれるし、あんな鉢の中じゃなくてもっといろんなところへ連れて行ってやれる。もっと大事にしようとして、水から出してやったのだ。でも、ちがう、と思ったけれど、幸村は何にも言えなくて、しょんぼりと寺への道を歩き出した。
金魚は死んでしまった。
五匹とも、幸村の大事にしていた金魚だったのだ。
幸村のせいだ。
そう思うと悲しくて、情けなくて、足取りは重くなった。懐で紙包みの銭子がちゃりちゃりと音を立てる。後悔というのを、じんわりと感じた。
かわいがっていたのだ。
病気になったら塩水も作ってやったし、鉢の底に石で城を造ったり、藻で輪っかを作ってやったりもした。餌だってけんかをしないようにちゃんとあげていたのに、幸村が、死なせてしまった。
ぎゅうっと唇を噛んだ。
初めて殺した。
道すがら、腹の銭が重くて、目の前がずうっと暗かった。
「金魚……」
思っていたら、人にぶつかった。
「あ」
人、と思った。
腹の中で、じゃらん、と揺れる音がして、幸村は相手の顔を見上げた。
髪の毛。
ふわっと風に浮いた一瞬、根元が赤かった。
「──どけって!」
「あ」
眉を寄せた。
なんだ、これは。
なんだ、と思って、手を伸ばした。
逃げていく。出会い頭に辻でぶつかって、一瞬見えた、赤。
「あ──」
幸村は手を伸ばした。
なぜかその手は、掴める気がした。
「──熱い!」
肌が、とろけるように冷たくて、掴んだ手のひらに、沁みた。
「わ」
気持ちいい。
「──坊主、そのまま掴んどけ」
ぎゅうっと力を込めた瞬間、何かが目の端を横切った。
・という金魚パロディ
・佐助の家は真田の庭の池
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水から出ると人になる金魚がいるらしいと聞いて、幸村はもうこの三日で五匹も金魚を日干しにした。
見事に、五匹とも死んだ。
そうなるとさすがに無頓着に六匹目に手をつけるのはためらわれて、何か供物だの手順だのがあるのかと家人に聞いて、凶行が発覚した。
「そういう金魚は違うんです」
散々叱られて懇々と諭されたうえ、半紙に二度と金魚は飼いませんとまで書かされた。
「お寺まで供養に行ってらっしゃい」
一郎居士、二郎居士、三郎居士、と戒名を付けられた金魚たちの弔い銭を持たされて屋敷を叩き出された。
「生き物を大事にできないような子は、真田にはいりません」
叩き出される前、そう言われたけれど、幸村は、全然違うと思った。大事にしようと思って、水から出したのだ。もし人になって話ができれば、もっといろんなことをしてやれるし、あんな鉢の中じゃなくてもっといろんなところへ連れて行ってやれる。もっと大事にしようとして、水から出してやったのだ。でも、ちがう、と思ったけれど、幸村は何にも言えなくて、しょんぼりと寺への道を歩き出した。
金魚は死んでしまった。
五匹とも、幸村の大事にしていた金魚だったのだ。
幸村のせいだ。
そう思うと悲しくて、情けなくて、足取りは重くなった。懐で紙包みの銭子がちゃりちゃりと音を立てる。後悔というのを、じんわりと感じた。
かわいがっていたのだ。
病気になったら塩水も作ってやったし、鉢の底に石で城を造ったり、藻で輪っかを作ってやったりもした。餌だってけんかをしないようにちゃんとあげていたのに、幸村が、死なせてしまった。
ぎゅうっと唇を噛んだ。
初めて殺した。
道すがら、腹の銭が重くて、目の前がずうっと暗かった。
「金魚……」
思っていたら、人にぶつかった。
「あ」
人、と思った。
腹の中で、じゃらん、と揺れる音がして、幸村は相手の顔を見上げた。
髪の毛。
ふわっと風に浮いた一瞬、根元が赤かった。
「──どけって!」
「あ」
眉を寄せた。
なんだ、これは。
なんだ、と思って、手を伸ばした。
逃げていく。出会い頭に辻でぶつかって、一瞬見えた、赤。
「あ──」
幸村は手を伸ばした。
なぜかその手は、掴める気がした。
「──熱い!」
肌が、とろけるように冷たくて、掴んだ手のひらに、沁みた。
「わ」
気持ちいい。
「──坊主、そのまま掴んどけ」
ぎゅうっと力を込めた瞬間、何かが目の端を横切った。
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